『三つ子の魂百まで』・・・幼稚園で流行曲を歌いまくっていた、にゃべ。校舎階段の踊り場を特設ステージに見立て、大々的なモノマネのステージが始まった。
「ヨソのクラスのやつらも、たくさん見に来てるからなー。もっと本格的にやらんと」
とムラカミ、マサらの悪乗りは止まるところを知らず、チョークで化粧を施されにゃべもすっかりその気に。踊り場特設ステージには、物見高い生徒らでかなりの人だかりが出来ていた。
最後は、学年主任の石頭オヤジに見つかた末にこっ酷く叱られるに至り、このステージは自然消滅となった。にゃべのモノマネも終了となったが、これをきっかけに元々校内一の人気者だった《スター・にゃべ》の人気は、いよいよ頂点にまで沸騰していった。女学生たちからの人気も、これを機にさらにウナギのぼりとなり、にゃべの元には強制的に終了させられた特設ステージを惜しむ向きからの「ファンレター」がワンサカと。
当時、隣合わせの席になっていた小夜子も
「ホントにゃべって・・・次から次へと、ようやるわねぇ・・・」
と呆れながらも、これを機に一歩踏み込んだ態度に変わってきたように感じたのは、あくまでも気のせいだったか。
(むふふ・・・ 次は、何をやったろうかな?)
と尚も悪巧みを企む、スター・にゃべに周囲は興味津々。スター・にゃべの特設ステージは、主任教師の中止命令によってあえなく断念の憂き目に遭ったものの、皆の印象にはかなり強烈に残ったらしかった。
最も期待した小夜子からのファンレターは、待てど暮らせど一向に舞い込んでくる気配はなかったが、代わりにというかサッコのアタックが益々、大胆さを増して来た。
「にゃべー!
今度の日曜日、デートしよー」
最初の頃のおとなしいサッコはどこへやら、今やすっかりオバタリアン顔負けのふてぶてしい本性を発揮してきたサッコだけは、唯一持て余す存在だ。
中学も間もなく卒業とあって、その言動は最早周囲の目などはいさい構わずといった感じで、濡れたようなギラギラとした瞳が一種、異様な輝きを帯び鬼気迫るものがあり、サラリ志向であるにゃべの背筋をゾッとさせるには充分であった。
このころのサッコは
「にゃべー。私も頑張って『A高』に行くから。一緒に通学しようねー」
などと言っていた。
『A高』は、学校区最難関の公立校で『B中』からは、上位30人くらいしか受験が許されない。トップ3が指定席のにゃべにとっては、居眠りしながらでも悠々当確ラインだが(サッコは、無理だろ・・・)と、見ていただけに
「高校でも、アイツと一緒になるということは、あるまいて・・・」
とタカを括っていた。が、3年生になって『A高』という目標に向かい、猛烈に成績を上げてきたとの噂もあり、些か気になるところだった。
「ね~、にゃべー! 一緒に『A高』へ行こうねー」
「オマエって、その辺りのラインにいたんだっけ・・・?」
「今んとこギリギリか、ちょっと厳しいかなっーてトコ・・・でも内緒ね」
「無理せずに『A東』へ行けばいいじゃん。無理すると、入った後に苦労するとかいうしなー」
0 件のコメント:
コメントを投稿