その後も淡路町、秋葉原、目黒不動前、新宿、渋谷などを精力的に廻り、2週目にしていよいよターニングポイントを迎えた。
まずは、外部向けコンテンツ立ち上げ新規プロジェクトの中で、現場(放送局M社)社員向けの環境設定及び運用設計案件で「チームリーダーとして、是非お願いしたい」というアプローチが掛かったのを皮切りに、続けて派遣大手T社から神奈川県某にある大手製造メーカーN社における、ネットワーク・サーバ環境導入チームの一員としてのお誘いが掛かった。
こうなってくると、最終的な一社に収束していくのが大変だ。取り敢えず返事を保留したままさらに活動を続けると、翌日には富士通系F社からクライアント管理プロジェクトのメンバーとしてのお誘いもあり、2日間で3社から引きが来た事になる。
まずは、最初に決まったM社から回答を迫られ
(この調子なら、他にももっといい話が出てくるぞ・・・)
と欲が出てきたために「今回は少し、方向性が違うと思われます・・・」と辞退を申し入れ、続いてユーザーヘルプのウェイトが大きいF社に対しても「もう少し、技術的なところを追求して行きたい・・・」と辞退した。
半ばは神奈川のN社に腹を決めつつ尚も活動を続けると、今度は大手町の銀行系Mグループからネットワーク・サーバ管理者として、お誘いが掛かった。
密かに本命視していたN社の件で、回答を引き延ばしているうちに大手派遣のT社から「クライアントが並行での求職活動に難色を示したので、今回は当社の判断で見送りとさせていただきました」という一方的な通知があったが、まあこれは仕方がない。
Mグループの話が、些かあやふやなところがある点に引っ掛かっていたため、さらに別件を探して新宿、浜松町、浜松町、新宿、八丁堀、神楽坂、信濃町、渋谷、田町、千石、八王子、神保町、大崎、新宿、秋葉原などをグルグルと廻った。
一旦決まったかに思えた、Mグループの件では「最終的なすり合せ中なので、少しお待ちを・・・」という返事が来たものの、その後は連絡が途絶え、気付いてみれば5件ばかりあった案件も、より方向性にマッチする仕事を求めて総てキャンセルしたせいもあって、結果的には一旦白紙の状態に戻った。
(やれやれ・・・再出発か・・・)
と気持ちを切り替えたものの、あれほど毎日数件というオーダーで入って来ていた案件情報も、木曜辺りからフッツリと来なくなり
(調子に乗って選んで来たのはいいが・・・これからまた、いい話が来るのだろうか・・・?)
不安と焦燥をを抱えたまま、寂しい週末を過ごす事になった。
前回は大手町、神保町、神田、渋谷辺りを中心に活動する中で、何故か新宿にはあまり縁がなかったのだったが
今回は圧倒的に新宿へ行く事が多くなった。 前回の経験を踏まえ、ウィークリーマンションを決める時には迷った挙句に、最も多い新宿ではなく大手町に近いところを選んだのだったが
(こんな事なら、新宿にしておくんだった・・・)
と、後悔の地団太を踏む思いである。その日も新宿南での会社訪問を終えると、今度は待ち合わせの西口へと廻るため炎天下の新宿御苑付近を、エッチラオッチラと汗を拭きながら歩いているところだった。
(そういや、さっきの面接中に2回も携帯が鳴ってたな・・・)
と思い出し、留守録を再生する。日程調整の1件目を確認し、2件目の再生に進んだ途端思わず
(うそだろー!)
と声が出た。
「にゃべさん、Tです。ご無沙汰してます。新たな案件が進行中ですので、折り返し至急ご連絡願います」
過去作読まれている方ならば、T氏の事は先刻ご存知だろう。元々がA市の同郷という事で、名古屋に居る時からなにかと世話を焼かれてありがた迷惑をしていたが、東京案件にも絡んで来ていたのは前にも触れて来た通りである。
前回の面接が上手くいかず、その後音沙汰がなかったのでこれ幸いと独自の活動に専念していたのが、1ヶ月も経った今になって突如として連絡をしてきたのも、この人のいつものやり方であった。
「例のこの前のS社のAさんから連絡が来て、今別の案件で進行中という事だから・・・一度打ち合わせをしたいんだけど、今日はこっちに来られないかな?」
「と言われても今、東京にいるんですが・・・」
「なに? 東京にいるって?」
と、一瞬絶句した後
「東京で何してるわけ? 仕事してるの?」
「東京で職探しをしているところですが・・・」
「じゃあ、まだ仕事はしてないんだろ?」
「だから、今探している所ですよ」
「ともかく、まだこれから決めていくわけだろ? だったら・・・この前のAさんから紹介があるから、その打ち合わせをしたいんだよ・・・」
「Aさんは、この前話した時に『万一、これが上手くいかなかった場合も次の手を打ちますので、個人で並行しての活動は控えるように・・・』とか煩く言っていたので、あの人には頼もうとは思っていません」
「まあ、それはオレの方から話しておくから・・・ともかく打ち合わせをするよ」
「といっても、こっちももう面接スケジュールとか入ってるし、この前のだって結局、返事も貰えなかったですよね。私としても、当てにならないものを数ヶ月も待っているわけにはいかないし、Aさんとはどうも方向性が一致しないから、こうして自分でやろうとリスクを犯して東京に出て来ている事を考慮してください」
と、ここはハッキリと意思表示をしておく。
「あっ、そう・・・じゃあ、断っておくか・・・」
と、さしものT氏も諦めたように電話を切った・・・
0 件のコメント:
コメントを投稿