2004/07/30

マンスリー物件(東京劇場・第2章)part12

新しい物件は、新宿と代々木のちょうど中間くらいのところにあり、新宿の繁華街までは歩いて10分程度だが、代々木の住宅街の中にあるため少し離れているだけで閑静な立地である。収納もなくただでさえ手狭なところに、セミダブルのデカイベッドがスペースを取っていた前の物件に比べ、収納や洋服ダンスにキッチンまである新しい住居は随分と広く感じる。

最大の利点は交通の便の良さで、社内待機期間の神田にも新しい現場となる某市にも、また短期間仕事が発生するかもしれない元請けN社のある三田へも、どこへ行くにも便利な新宿駅まで歩いて10分ほどなのである。

といっても勿論いい事ずくめではなく、周囲にスーパーや大型のドラッグストアなどがないのは前と同じだったし、コンビニまでも10分近く歩かねばならないのは、道を挟んだ隣にあった前の住居の時に比べ面倒に感じる。さらにエレベーターがない物件なので、5階の部屋まで56段の階段を往復しなければならないのも、真夏は過ぎたとはいえ蒸し暑さが残るこの時期には負担であった。

以前に下見をしながら、結局引っ越さなかった最大の理由は「光熱費実費」というシステムのためだ。以前は一律料金だったため、休みの日などはエアコンも電気も終日つけっ放したままだったし、トイレも3回くらい流していたものだったが、それらを小まめに消して歩かねばならないのが手間なのと、業者が念入りに消毒をしたらしく塵ひとつないような清潔な部屋だった前の住居に比べ、決して汚いわけではないがやはりマンション形式のため、家財等の経年劣化が幾らか目に付いた辺りがマイナスだ。

しかし越してみて改めて感じた利点は、やはり「新宿まで10分少々」という日本一ともいうべく足回りの良さと、光ファイバーのインターネットが常時30MBの高速接続で安定していたところである。

 さて、物件に到着し前家賃の12万ほどを支払うと、以前の下見の時に部屋の案内と説明をしてくれた若い女性と再会する事となった。

「あ・・・以前の・・・」

「いやー、失礼したね。チト事情が変わって、ずれ込んでしまったんだ・・」

かつては下見をしておいてトンズラした後味の悪さが一瞬過ぎったが、改めて契約に漕ぎ着けたのだから、ここは「事情が変わった」という事にしておく。

予約の電話をしている時も、受話器越しの小さな子供の泣き声がやたらと聞こえてきたが、こうして説明を訊いているとまたしてもフロントの奥の方から、癇の虫が喚きだした。そしてドンドンと戸をたたく音に目をやると、小学校低学年児くらいのかわいらしい男の子が、ジーっとこちらを見ている。

「あれは・・・誰?」

「あれは、私の子供です・・・」

「え? あんな大きな子供が居たの?
学生さんとばかり思っていたけど・・・」

実際どうでも良い事だが、最初見たときから学生のアルバイトくらいにしか見えないくらいに若い作りでもあり、また実際に若くも見えたのだった。

「まあ、そんな事はどうでもいいから、案内を続けてくれたまえ・・・」

と階段で5階まで上がって部屋に入ると、実に丁寧に説明をしてくれたのであった。一通り説明が終わってから

「さっきのフロントに居たオジサンは、オヤジさん?」

と訊くと

「えー? そう見えますかー? そんなに似てますー?」

と、かなりショックを与えてしまったらしい。実際、中国人のような太目のハゲオヤジと学生のような可憐な感じの彼女では、どう逆立ちしても親子関係には見えなかったが。

「いや、ジョーダン、ジョーダン・・・にゃははは」

と、ここは笑って誤魔化す事にした。窓を開けてベランダに出ると、聳え立つ新宿の高層ビル群が目に入る。「時計台」として有名なDoCoMoビルやタカシマヤ・タイムズスクウェア、或いは文化女子大学のバカデでかいキャンパス、少し向こうには都庁、東京医大、西口の高層ビル群が聳え立ち、また明治神宮や新宿御苑にも近いという立地である。

「ところで・・・5階ともなると蚊とかGなんかは、あんまりいないよね・・・?」

前の物件では真夏を通してもついぞ見なかっただけに、ついでという感じで軽く訊くと

「そうそう、代々木ってGが多いんですよ・・・それも凄く大きいヤツが・・・」

ガ━━━━━━(´Д`;)━━━━━━ ン

「なんで、そうなるわけ?」

「近くの明治神宮に、大きな木が沢山あるからじゃないですか・・・なんか余計な事を言ってしまいましたね・・・」

直ぐにも逃げ帰りたい(;´д` )トホホ

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