引越し（東京劇場・第2章）part11

　「ほほー・・・改善って、具体的にどうするわけ？」

「実は秋葉原の物件でもつい最近、同じようにＣ国の団体が入居してから回線に障害が出ましてね・・・それでLANを組み直して強力にしまして（帯域を増強したという事か？）、それからは一切苦情が出なくなったのです。で、その時にお客様の物件の方にも同じ装置を入れましたので、それを切り替えれば障害を回避出来るのです。ただし今日はフロントが休みなので、明日朝にフロントの女性が出て来たら早速、対応するよう指示を出しておきますので・・・」

「そんな環境が出来ているなら、早いとこやって欲しいよ・・・Ｃ国人の研修団体かなにかは知らんしまったく関係ないけど、本来常時接続を謳っているからには、どこかのヘビーユーザーが使い始めたらこっちが使えないなんてバカな話があってはならないんだよね・・・」

「仰る通りで、それでは当社としても看板倒れという事になりますからな・・・そこは責任保証という事で明日には必ず改善させますので、申し訳ありませんが今日一日だけはご辛抱を・・・」

という事で、もう1日様子を見る事になった。

そして翌日・・・朝から快調に接続が出来、安心して松屋で朝定食を食べて帰ると、例によって通路やエレベーターにＣ国人の姿がそこここに見られ嫌な予感がしたが、その予感はやはり的中した。またしても、接続が出来なくなっているではないか。

早速フロントに行き、昨日からの経緯を説明すると

「えー？　そんな装置なんて、ないですけど・・・」

という思わぬ返答である。

「は・・・昨日の管理人みたいな人は、確かにそう言ってたよ。秋葉原の方はそれで解消したし、ここにも同じ環境を作ってあるから、後はフロントで切り替えれば終わりだと・・・」

「以前にもお話した通り、こちらではただルータに再起動をかけるくらいしか出来ませんし、そういった装置はありません」

（というと、あのオッサン・・・苦し紛れに一時凌ぎの嘘を付きやがったか・・・？）

「それにですね・・・Ｃ国の方たちは昼間は仕事に行ってますので、朝とか昼からそういう現象が起こるというのは、少し原因が違うような気が・・・」

と、まったくわけのわからない話である。

「そういう事なら、明日までにして貰おうか・・・1か月分の前金を入れてるけど、キャンセル料云々はこの際払えっこないけど」

「勿論こんな事情ですから、それは戴きません・・・」

と、急遽方針転換を決めた。

　フロントから部屋へ戻る通路にも中国人が何人かだべっている姿が見られ、換気のためドアを開放している室内にまで、その話し声が耳についた。そして接続・・・やはり、まったく繋がらない・・・耳に入って繰る中国人たちの笑声は、あたかも繋がらないイライラをあざ笑うかのようである。

（もう我慢出来ん・・・）

と以前から目を付けていて、かつては一度下見に行ったこともあった新宿のマンスリー物件に電話をすると空室があるとの事だったので、急遽その日の内に引っ越す事を決めた。荷物は宅急便で運んで貰う手筈をして、身の回りの用意をすると早々に引越しを終えたのであった。