2004/07/20

迷子のにゃべ(東京劇場・第2章)part2

 翌日も朝からしっかりと暑い中、朝一番で神田の某社からスタート。前回の経験から、神田にはかなり何度も足を運び駅周辺の土地勘に関しては些か頼むところがあったが、駅からかなり離れてしまっては元来の乏しい知識ではどうにもならず、炎天の中ですっかり迷子になってしまった。

時間の余裕を持って出てきた筈だったが、無駄にウロウロとしているうちに約束の時間が迫って来たため、仕方なく電話で訊いてみる事にする。

「えーっと、今は『かんだみどよちょう(神田美土代町)』の交差点のところなんですが、ここからどういけばいいのか、教えてください」

ところが電話に出た担当者が、皮肉っぽい粘ついた感じの口調が癇に障る嫌味な御仁だった。

「はぁ? 『みどよちょう』?
そんな交差点名は、訊いた事がないなー・・・わからない・・・」

これでは、取り付くシマもない。周囲にこんなものがありますと、目印になりそうなものをいくつか挙げると

「もしかして『みどしろちょう』(正確には『みとしろちょう』らしい)の事かな?」

「『みどしろちょう』・・・なるほど・・・そうも読めるか・・・」

と、恥をなんとか誤魔化した。ところが電話で訊いたとおりの場所に来ても、一向にそれらしいビルが見当たらないではないか。住所も確かに合っているはずなのだが、何度見ても該当するビルの所在が掴めない。

偶々、アパートニュースか何かの店舗があったので、そこに入って訊いてみる。

「『××ビル』というのが、この辺りにあるはずなんだけど、どこでしょーかね?」

「『××ビル』って・・・訊いた事ないなー。ちょっと待ってくださいねー」

といって、住宅地図を引っ張り出して探してくれた。

「あったあった。ここですよ。1本向こうの道を左に曲がってまっすぐ行くと、突き当たりにあります」

「それって、はんこ屋さんの近くですか?」

「そう。はんこ屋さんの向かい側だね・・・」

「おかしいなー・・・あの辺りは、さっきから何度も通って来たんだけど、それらしいビルはなかったけどなー」

「いや、あるはずです、絶対に!」

と強い口調で促され再度、疑問を抱えたまま何度も通ってきた道を注意深く歩いていくと、ご大層な社名とは裏腹に駐車中の軽トラックに隠れる形で小さな看板がひっそりと掛かっていた。周辺一体で最もボロい建物が目指すビルであった。

 約束の時間に15分ほど遅れ、ようやくたどり着いたボロビルにあるご大層な名前の会社で、出てきた担当者は「取締役」の肩書きが付いていた。

「わかりにくかったでしょ?」

「ええ。時間前に着いていたんですが、なにせ土地勘がないもので・・・」

炎天下を散々歩かされ、朝から汗だくになってしまった苛立ちで

(実は時間通りに来ていたのですが、あんまりぼろいビルなので何度も前を通っていながら、まったく気が付かなかったんだ・・・)

と、腹の中で毒づきながら・・・その後の面接が、またしても喧嘩のようになってしまったのはそうした苛立ちのせいではなく、担当者の取締役がなにかと嫌味だったせいに尽きる。危うく喧嘩別れのような形になるところだったが、なんとかその場は取り繕ってそそくさと退散した。

午後からは、高田馬場へ移動。相変わらず、学生らしい若者でごった返す賑わいの中を縫って某社を訪問するち、ここでは一転して

「是非、うちの社員にならないか?」

と歓迎を受けたが返事は保留し、続く飯田橋の会社を訪ねて、この日の日程を消化した。

翌日は午前が大手町、午後からは新宿、西新宿と廻り、翌日は朝から池袋のサンシャイン60内にある会社を訪問。サンシャイン60の場所は、記憶になかったが

(まあ、あの辺では一番高いビルだろうから、直ぐにわかるさ・・・)

と、事前に碌に調べずに行ったのが災いした。池袋の駅を降りて周囲を睥睨すると、鉛筆のような細長い高層の建物が一際目に付く。

(ん? あれがサンシャインか?
高さだけは群を抜いているが、なんか変だな・・・)

オフィスビルにしては、いかにもスマート過ぎるのである。

(それにしても、あれだけ群を抜いた高さだし・・・)

念のため、開店したばかりの『ビックピーカン』の店員に

「サンシャイン60は、どこかな?」

と訊いてみると

「ここをまっすぐ行って、次の信号を右に曲がると見えますよ・・・一番デカいビルだから、直ぐにわかります」

「まあ、一番デカイってのは、わかっているけどね・・・ありがとー」

(ということは・・・あのさっきの鉛筆のような、細っこいビルは何者?)

と改めて目に入った周辺地図に目をやると、それは「豊島清掃工場」なる建物であった(* ̄m ̄)ブッ

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