2004/07/19

灼熱地獄(東京劇場・第2章)part1


 学生時代から、その行く手に必ず波乱ありというところから「を呼ぶオトコ」と言われたワタクシだが、社会人になった今もってその傾向があるようである。
 前回のシリーズでも触れてきたように、転職のため上京した時も、6月だというのに出発の日がいきなり季節外れの台風にぶち当たり、購入したばかりのPCを心配しながらの移動を余儀なくされたものだったが、今回は7月の真っ盛り
 
(よもやこの時期に、またしても台風にぶち当たる事もあるまい・・・)

 と、鷹揚に構えていたまでは良かった。混雑を避け、三連休最後の日の昼近くになって新幹線に乗ったのも計算通りで、決して空いてはいなかったものの、それでも座っていく事が出来たから楽だった。

 前回は2週間足らずの短期間だったので、ウィークリーマンションの検索と初期の手続きの煩雑さに嫌気がさし、結局は某有名ビジネスホテルに連泊となったのだったが、今回は1ヶ月近い期間だから幾ら安いとはいえビジホはキツイ。というわけで、半日掛かりでネットで検索を続けて、安くて手続きも簡単なウィークリーマンションを見つけたのである。

 一泊辺り4000円強だから贅沢はいえないが、取り敢えずはエアコンとネットの接続環境(モジュラー)、冷蔵庫、電子レンジ、バス・トイレ、ベッド、 TV(はどっちでも良いが、あれば野球や天気予報くらいは観られる)、コインランドリーくらいがあればいいので、部屋が狭いのは仕方がない。

 キッチンの有無により1日辺り500円の差が出るので、キッチンなしの部屋にした事は言うまでもない。キッチンなどあっても、湯を沸かすくらいしか使わないのだから、ポットで用は足りる。ところが、この「キッチンなしシングル」が、1階しか空いてないという。

 「別に1階でいいけど・・・」

 1階というのが実は半地下になっておりまして、殆ど陽が当たらず昼間から電気をつけていなくてはならないくらい暗いんですけど・・・勿論、エアコンがあるので、暑くはないですが・・・」

 「なに?
 そんなモグラみたいなのは嫌だねー・・・上の階は空いてないのかな?」

 「他は、セミダブルになってしまうんですが・・・」

 当然の事ながらセミダブルはシングルよりは高いのだが、訊いてみれば1日当たり200円程度しか変わらないという事だったので、セミダブルの部屋にした。

ともあれ、そうして仮の住まいに落ち着いて、その日は準備に充て翌日からいよいよ活動をスタートしたところで、冒頭に触れたようにまたのっけから、思わぬ天の悪戯に見舞われる事になろうとは。

 とにもかくにも上京して仮の住居に落ち着くと、翌日から活動開始となった。事実上の初日となる連休明けのこの日は、午前1件と午後2件の予約が入っている。

 午前9時過ぎに待ち合わせ場所の本郷に到着し、駅を出たところで待っていたものの、まだ朝の時間帯というのに異常な暑さで、立っているだけでも汗がダラダラと流れてくるのには閉口した

 現われた担当者は、60に近いような年配のオジサンだったが

 「いやー、暑い暑い・・・朝から酷い暑さですね・・・」

 と、今にも死にそうに顔を顰めていた

 「にゃべさんは、東京に出て来たばかりだと訊いてますが・・・この暑さは、大丈夫ですか?」

 「まあ、元々夏は日本一、二番目に蒸し暑といわれる名古屋の人間なので、大丈夫ですよ・・・しかし、東京は名古屋より幾らかマシかと訊いていましたが、全然同じですね・・・毎年こんな暑さですか?」

 「いや、今年は例外中の例外だねー! こんなクソ暑い事は、経験がないよ・・・」

 という口調は、些かやけくそ気味に力が入っていた。

 午後からは一番で、新宿駅での待ち合わせ。13時という最も暑い時間帯に加え、例によって新宿駅南口のあの人混みが益々、暑さに拍車をかける。少し遅れて、担当の女性営業が現われた。

 「暑い中恐縮ですが、15分くらい歩いていただかなければならないのですが・・・」

 と、新宿駅タカシマヤ、DoCoMoビル(通称時計台)などが並ぶ、あの陽を遮るもののないアスファルトの大通りを歩いている時は

 (こりゃ、名古屋よりも暑いんじゃないか・・・)

 と思えたほど、強烈な暑さに見舞われた。

 この日最後は、夕方4時から新宿西口での待ち合わせ。まだまだ暑さは一向に衰えず、新宿の雑踏を往復30分歩いたので些か頭がボーっとしかけている中で、面接担当者の嫌味な態度に初日から早くもぶち切れてしまった。

 つまらぬ事から、ちょっとした口論となり

 「私は別に、喧嘩するために来たわけじゃないので・・・仕事をご紹介してあげようと思って来たのですが・・・しかし、これじゃ無理ですね・・・田舎の方は知りませんが、東京ではそういう挑戦的な態度だと、どこへ行ってもなかなか決まらないよ・・・」

 「そっちが、嫌な言い方をするからだ・・・こっちもも、わけのわからん零細会社などは最初から相手にする気はなかったんだ・・・」

 東京では穏やかにやっていく腹積もりが、初日にして早速「」が出てしまった。
 
こうして初日のスケジュールはともかく終わったものの、ウィークリーマンションへ帰る道中も、とっくに陽が落ちているというのに一向に暑さが和らぐ事もない。
 
エアコンはあるので寝苦しさからは免れはしたものの、この日の東京は大手町で観測史上最高となる39.5度を記録したほか、午前4時の最低気温が30℃を上回るなど、台風に見舞われた中で出発した前回に続き、またしてもトンデモナイ船出となってしまった。

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